A Story of ColorsOfJapanKyoto 第15回 タナカ製陶さん 窯焚き編

 こんにちは。本日も当店にご来店いただきありがとうございます。今回は前回の続き、タナカ製陶さんの作品制作について。いよいよ窯焚きです。

 今回取材させていただいたのは穴窯という種類です。洋梨を横にして下1/4を地面に埋めたような形で、中央部分が膨らんでおり、手前の入り口から薪をくべて奥の煙突から空気が抜けるようになっています。また所々に空気穴がありこれをわずかに調節することで中の火の流れをコントロールします。このコントロールもサイコロひとつ、というぐらいの僅かな調節で出来上がりが全く変わってくると言います。

 また窯自体は屋根があるものの屋外のため、外気や地面の湿気が影響します。窯の内部はに耐熱と断熱の2種類のレンガを使用し影響されにくいようにはしていますが、今回梅雨時ということもあってかなり温度調整に苦労されていました。 

 作品の窯入れですが空気の流れと作品のサイズ、色の出し方等を計算しつつ一点一点行っています。背の高い作品の影に隠れると上手く釉が乗らない(色がでない)等の影響が出、また直接火に当てたくないものは”鞘”と呼ばれる箱に入れ設置します。重ねるものや直接窯の底に置くものは焼き上がると剥がれやすくなる粘土に貝殻を貼り付けその上に載せています。当然ながら時間をかけて制作したものですから、このようにして100点をこえる全ての作品を丁寧に窯の中に置いていきます。今回は延べ7時間程かかりました。窯入れが終わったら、薪を入れる最低限の口を残して、一旦入り口を塞ぎます。

 いよいよ火入れですが、いきなり火のついた薪を窯に投げ入れるのではなく、まずは入り口の前で火を焚きます。窯の中は平時非常に湿度が高く、まずは窯の内部の空気を乾燥させる必要がある為です。窯の上部には温度計を刺す穴があり温度をモニターしつつゆっくりじっくりと温度を上げていきます。これはひとつに、急激な温度の上昇は作品を膨張させて破損させてしまうのを防ぐ、ということだけでなく

 窯の内部の温度は外気などに影響を受けやすく、薪を入れただけで下がってしまいます。薪が燃え始めると持ち直しますが、それが燃え尽きまた追加する際には温度が下がっていきます。そうして一進一退のように少しづつ温度をあげつつ、熾を作っていきます。この熾が非常に重要で、これに埋もれさせる、またはここから生じる灰がかかることで作品の表面の色(出来)が変化していきます。 

 窯の内部が温まって乾燥してきたら、一端封をした口の上半分のうち必要な分、だいたいブロック4X4分を開け、薪の投入口を作ります。また予め、ここを閉じることのできる吊り扉が用意してあり、温度が下がらない工夫がされています。ここから大人の腕ぐらいの太さの薪を一度に14本づつくべていきます。

 くべる際は木扉と言って、扉のように入り口一杯に薪を積み上げます。薪の先端が燃え始めたら徐々に奥に押しこんでいき、吊り扉を下ろし口を閉めます。

 薪入れ→燃焼のサイクルを何度も繰り返し窯内部手前から奥に向かって少しづつ熾を溜めていきます。下がっては上がりを繰り返し徐々に温度を上げていき、夜22時から始めた窯焚きは、内部の温度が1000度へ達したのは翌日16時。しかしここからが本番です。

 今回の窯の目標温度は1280℃。そこからやや温度を下げた1240℃で温度を安定させ、更に長い時間焚き上げます。高温のため薪もすぐ燃焼してしまうので温度管理に気を使いつつ薪を入れていきます。翌日の午後までこの状態を維持し続けました。焚き上がってもすぐに窯の温度は下がらないので1~2日程かけてそのままゆっくりと自然冷却します。

 ようやく窯出しの日です。まず入り口に残った封印のレンガを取り除き、冷えた炭を取り除きます。盃のような小さめの作品はその中に埋まっている場合がありますので手で慎重に除いていきます。また焚き上げの際薪や熾が干渉してしまい破損してしまったもの、倒れてしまい窯に張り付いてしまったものを取り出します。

 薪に釘などの異物が付いていたものは焼け残り場合によっては作品にぶつかって影響を与える場合もあります。大きな作品に関しては火が当たった側からその裏側にかけて見事な色合いでグラディエーションが発現します。サイズも縮み、歪みもでます。窯の持ち主である陶芸家の川根さんはこれらは作品の唯一無二の”ストーリー”だと言います。

 こうして窯出ししたもののうち多くはキズモノであったりと、思い通りの商品とはなりえません。粘土をこねるところから初めて延べ数十時間もの時間を積み上げ、納得の行く出来はほんの一握り。しかし安定してある一定のクオリティーの作品を提供してくれる電気窯とは違った、想像を超えた美しさを持つ作品がうみ出される可能性を持っており、それが一番の魅力です。

※すでに触れたとおり、タナカ製陶さんでは通常電気窯を使用しています。作品は高いレベルでの一定のクオリティーを持っており、ColorsOfJapanKyotoではそちらの作品を扱わせて頂いています。

 今回も最後までありがとうございました。